Geofenceの精度に関する基礎実験
まえがき
けいはんなアバターチャレンジでは、アバター(遠隔操縦ロボット)を歩道で走行させる必要がある。アバターと観客が不用意に接触しないようにするには、マラソンのようにフェンス等で区切る方法がある。コースをすべてフェンスで囲うのはコスト高につながること、また観戦もしにくいという欠点がある。
GPSを利用した仮想的なフェンスはGeofenceとして知られて、種々の開発ツールが知られている。ここでは、GoogleMAPでエリア指定した時、実際の測定値と、GoogleMAP上の位置がどの程度ズレるのかを簡単な実験によって調べている。
結果は、GoogleMAPを使ったこのような簡易な設計でも、GoogleMAPでの指定位置と72cm程度のずれを見込んでフェンスを設計すればよいことが分かった(RTK-VRS(SoftBank社ichimill)の地殻変動量補正なしのマウントポイントに関しては、最近SoftBankが地殻変動量補正ありのマウントポイントを発表しているが、使用した受信機の設定が間に合わなかった)。
測定場所
図1の①~⑩が表3のAC1~AC10に対応する。ただし、AC6は上記の緯度34.744892、経度135.765469の地点を誤って想定したため、修正箇所をAC6とした。
使用機器
使用した測定器のソフトウェア表1に、ハードウェアは表2に示す。
種別 | 製品名 | 開発会社 |
iPadアプリケーション | GeoDiveEXA | ハイウエアエクサ株式会社 |
機器種別 | 機器名 | 製造会社 |
タブレット | iPad(OS17.1.1) | Apple社 |
ミニマイコン | M5StackBASIC | M5Stack社(中国深圳) |
GNSS受信モジュール | M5F9P(M5Stack内蔵) | 株式会社ジオセンス |
アンテナ | BT-345AJ | Beitian社(中国) |
測定場所・日時・測定方法
測定日時と場所は、2023.12.8の京都府精華町のけいはんなプラザ前の日時計広場である。GNSS計測には、ichimill補正利用し、各点1秒間隔5回の平均値をとった。地殻変動量補正なしとした。ここで、図1の⑤、⑥は、四角いブロックの東南の角(図では右下)にアンテナを接して測定し、アンテナの位置は地面から40cmほどである。
測定結果
測定結果を表3に示す。ここで、MIN、MAX、AVEはそれぞれ、最小値、最大値、平均値であり、緯度差分、緯度差分の絶対値、経度差分、経度差分の絶対値に対して求めている。絶対値の最大値で考えると、緯度で0.000003、経度で0.000007度ズレると見込まれると分かる。このため、基準点をAc3(緯度 34.744953、経度 135.764917)からこのずれを見込んだ点(緯度34.744956、経度 135.764924)との間の距離が、この測定実験の精度となる。
ヒュベニの公式で距離を求めると0.722242209m。絶対値の平均値で考えると、緯度で0.00000112、経度で0.00000463のずれなので、平均44cmと出る。
ここで、GoogleMAPは小数点以下6桁なので、0.000001未満の誤差は分からない。このため、14cmより良い精度は望めない。
測定場所 | Google緯度 | Google経度 | TakionCM緯度 | TakionCM経度 | 緯度差分 | 緯度差分絶対値 | 経度差分 | 経度差分絶対値 |
Ac1 | 34.744972 | 135.764867 | 34.74497299 | 135.7648636 | -0.00000099 | 0.00000099 | 0.00000338 | 0.00000338 |
Ac2 | 34.744971 | 135.764895 | 34.7449727 | 135.7648892 | -0.00000170 | 0.00000170 | 0.00000578 | 0.00000578 |
Ac3 | 34.744953 | 135.764917 | 34.74495347 | 135.7649128 | -0.00000047 | 0.00000047 | 0.00000422 | 0.00000422 |
Ac4 | 34.744953 | 135.764946 | 34.74495352 | 135.7649404 | -0.00000052 | 0.00000052 | 0.00000561 | 0.00000561 |
Ac5 | 34.744888 | 135.765025 | 34.74489145 | 135.7650188 | -0.00000345 | 0.00000345 | 0.00000619 | 0.00000619 |
Ac6 | 34.744892 | 135.765469 | 34.74489199 | 135.7654623 | 0.00000001 | 0.00000001 | 0.00000668 | 0.00000668 |
Ac7 | 34.744828 | 135.765766 | 34.74482888 | 135.7657623 | -0.00000088 | 0.00000088 | 0.00000367 | 0.00000367 |
Ac8 | 34.744895 | 135.765861 | 34.74489722 | 135.7658566 | -0.00000222 | 0.00000222 | 0.00000442 | 0.00000442 |
Ac9 | 34.744996 | 135.765812 | 34.74499585 | 135.7658078 | 0.00000015 | 0.00000015 | 0.00000418 | 0.00000418 |
Ac10 | 34.745023 | 135.765516 | 34.74502215 | 135.7655181 | 0.00000085 | 0.00000085 | -0.00000213 | 0.00000213 |
MAX | 0.00000085 | 0.00000345 | 0.00000668 | 0.00000668 | ||||
MIN | -0.00000345 | 0.00000001 | -0.00000213 | 0.00000213 | ||||
AVE | -0.00000092 | 0.00000112 | 0.00000420 | 0.00000463 |
その他の技術資料
ここでは、競技会を遂行するにあたり必要となる技術情報をアップロードします。
■2023年11月19日:プレ大会技術調査報告
■2023年9月3日:日時計周辺でのStarlink経由アバター動作試験
■2023年8月7日:山岳地帯におけるStarlinkの通信評価実験
■2023年7月29日:temiコントロールセンタの使い方
■2023年7月29日:Double3の使い方
■2023年7月2日:temiの使い方
■2023年3月9日:アバター使用を想定したStarlinkの通信特性評価実験
■2023年1月26日:精華町日時計回りでLTEをアクセス回線とした場合の通信特性